まごころを君に セリフ

「またかぁ、今日は学校で友達と会うんじゃなかったっけ?」 赤い海。星が瞬く夜空。月明かりに照らされる白い砂浜。全てが破壊され、辺りには人や建物の姿はない。地表に落ちたリリスの顔は、右半分だけの状態で不気味な笑みを浮かべている。杭に打ち付けられたミサトのペンダントトップ。両腕を広げて十字架のような形で固まっているエヴァ量産機。量産機は、墨のように黒く変化した状態で赤い海に突き刺さっている。静かな波打ち際。衛星軌道上には、黒き月が残した赤い粒子のベルトが月に被さるようにして浮かんでいる。, いつの間にか、シンジはアスカと並んで波打ち際の砂浜に寝転んでいた。シンジは制服姿だった。アスカはプラグスーツのまま、右手には包帯、左目には眼帯をしていた。月に被さる赤い線を眺めていたシンジは、顔を横に向けて赤い海の方を見る。そこには、水の上に浮かぶレイの姿があった。しかし、確かに見えたはずのレイの姿は、次の瞬間には消えていた。  ブランコが揺れる景色。公園という舞台。シンジの隣で、人形が砂の城を見つめている。 「もう1週間だぞ。……ここでゴロゴロし始めて」  そう言ってシンジの前にカヲルが現れる。 「いいえ。全てが一つになっているだけ。これが、あなたの望んだ世界そのものよ」 「自らの心で自分自身をイメージできれば、誰もがヒトの形に戻れるわ」とレイが言う。 「でも。その手は何のためにあるの?」とレイは言う。 「でも、あなたとだけは、ゼッタイに死んでもイヤッ!」とアスカが言う。, きらめく水面 「都合のいい、作り事で現実の復讐をしていたのね」とレイが言う。  制服姿のシンジは、畑の上という、ごくありふれた風景の上に立つ。 「だんだんね。コツがつかめてきたの。だからぁー。ねェ」 「イ・ヤ」 「希望なのよ。ヒトは互いに判りあえるかも知れない……ということの」 「自分が人から愛されるとは信じられない。私にそんな資格はない」 「あんた、誰でもいいんでしょ!ミサトもファーストも怖いから、お父さんもお母さんも怖いから!私に逃げてるだけじゃないの!」  シンジが手に握っていたミサトのペンダントを離すと、ゆっくりと浮かび上がっていく。  人が行き交う雑踏, 「ねぇ?」とシンジは言う。  冬月は、夏の光に照らされてキラキラと光る水面を見つめる。 映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを君に』ネタバレ感想・考察・解説を紹介します!「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを君に」はアスカのラストシーンなど、極めて難解ながら伝説と化した完結編です。 「再びA.T.フィールドが、君や他人を傷付けてもいいのかい?」 「でも……僕はもう一度会いたいと思った。その時の気持ちは本当だと思うから」 「好きだ、という言葉とともにね」 「バーカ!知ってんのよ、アンタは私をオカズにしてること。いつもみたくやってみなさいよ。ここで観ててあげるから。あんたが、全部私のものにならないなら。私……何もいらない」  そう言って、アスカはシンジの足を蹴飛ばす。 「一人にしないで!」 「自分しかここにいないのよ。その自分も好きだって感じたことないのよ」  アスカはシンジの方へ歩いて近づいて行く。 「うぅ……」 「むしろ、いないほうがいいんだ。だから、僕も死んじゃえ!」とシンジが言う。 「夢?」とアスカが言う。 「あーあっ。私も大人になったらミサトみたいなコト……するのかなぁ?」  シンジは力なくうなだれたまま、ゆっくりと立ち上がる。 「バッカみたい!ただ寂しい大人が慰めあってるだけじゃないの」  ミサトの声がする。, かつての加持の部屋。  両腕を大きく横に広げたまま、地表に降りていく量産機。 「ねぇ。キスしようか?」 「そうよォ。これもワタシ。お互いに溶け合う心が写し出す、シンジくんの知らない私。本当のことは結構、痛みを伴うものよ。それに耐えなきゃね」  アスカは、声を濁らせてシンジを罵倒する。 「でも。その心は何のためにあるの?」とレイは言う。  レイの声が聞こえる。 「じゃあ、何もしないで。もうそばに来ないで。あんた私を傷つけるだけだもの」  シンジはペンダントを見つめながら、自分の気持ちに気づく。  ゼーレも例外なくL.C.L.となっていく。キールは全てに満足し、液体に姿を変える。キールがL.C.L.に還る瞬間、赤い光が天に昇っていくのが見える。そして、キールのいた場所に残骸が残る。彼は、脊椎から下が機械化されていたサイボーグだった。, ゲンドウは、ターミナルドグマで右腕を抱えながら横になっていた。 「あは……あは……あははははは」 「では、なぜここにいるの?」とレイは言う。  アスカは椅子の背もたれに肘をついてシンジに聞く。 「だから、見失った自分は、自分の力で取りもどすのよ。たとえ、自分の言葉を失っても。他人の言葉が取り込まれても」とレイが言う。 「それが一番楽でキズつかないもの!」 「先輩……先輩!……先輩!……先輩!」 「だから、ここには僕はいない」とシンジは言う。 「あんたのことなんか好きなわけないじゃないの」  シンジは、仰向けに寝ているアスカに馬乗りになって首を絞める。 「マヤ……」 「本当のことは皆を傷つけるから。それは、とてもとてもツライから」  シンジの正面に立ったアスカは、表情を強張らせてシンジに言う。 「そして、新たなイメージが、その人の心も形も変えていくわ。イメージが、想像する力が、自分たちの未来を、時の流れを……創り出しているもの」とレイが言う。 「でも、母さんは……母さんはどうするの?」, ユイの願い―― 「自分が求められる感じがして、嬉しいのよ」 「……ここにいてもいいの?」, 第2発令所で事態の変化を観測するオペレーターたち。 「僕一人の夢を見ちゃいけないのか?」とシンジは言う。  城が完成する。シンジは無言で城の前に立って、それを見下ろす。その城は、四つの面で出来た平坦な作りで、まるでピラミッドのような形をしている。シンジは、その城を踏み付けて壊していく。  満月を背にして微笑むレイの姿。裸のまま仰向けになったシンジの上に、レイが裸の状態で跨って覗き込んでいる。 「他人の存在を、今一度望めば、再び心の壁が全ての人々を引き離すわ。また、他人の恐怖が始まるのよ」 「あぁっ……はぁぁっ…………ぁあぁーーー!」 「心配ないわよ。全ての生命には、復元しようをする力があるの。生きてこうとする心があるの。生きていこうとさえ思えば、どこだって天国になるわ。だって生きているんですもの。幸せになるチャンスは、どこにでもあるわ……」とユイの声が聞こえる。  いつかの二人きりの部屋のアスカが、シンジに向かって言った言葉。 「何か役に立ちたいんだ。ずっと一緒にいたいんだ」 「はい。ヒトはこの星でしか生きられません。でも、エヴァは無限に生きていられます。その中に宿る人の心とともに。たとえ、50億年経って、この地球も、月も、太陽さえなくしても残りますわ。たった一人でも生きていけたら……。とても寂しいけど、生きていけるなら……」 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序のセリフとストーリー / EVANGELION:1.01 YOU ARE (NOT) ALONE. サムネ、サブタイ画面を真似てみたんですがタイトルもあいまって厨二感がパないですね...でもこれでいいんだこれで!, 『新世紀エヴァンゲリオン』TV版・旧劇場版『Air/まごころを、君に』雑感 ~他者の道具性~, Twitterでマンガの感想をつぶやく人です。たまに140字×nでは表せないものを感じたら、ここに投下しています。, 【『進撃の巨人』論Ⅱ-2】「自分らしく、好きなように生きる」ことが導く、10年代作品群のカンブリア大爆発. 「あ、アスカ助けてよ……。ねぇ、アスカじゃなきゃダメなんだ」  光の羽を初って宙に浮かぶ初号機が、口からロンギヌスの槍を吐き出し両手でしっかりと握り締める。それを元の二股の槍の形に変化させると、槍は光を放って輝く。その光に反応するようにして、量産機に突き刺さった槍がぶくぶくと膨れ上がった後、破裂するようにして消滅する。  幼い頃のシンジ。 「ヒトの生きた証は、永遠に残るか……」, 宇宙空間を漂う初号機とロンギヌスの槍が、永遠の彼方へと遠ざかって行く。 「判るはずないよ。アスカ何も言わないもの。何も言わない。何も話さないくせに。判ってくれなんて、無理だよ!」  感情を露にしたアスカが目を見開く。  電車の中で、アスカはシンジの座った椅子に足を乗せて問い詰める。  ミサトの声が聞こえる。  膝を抱えたシンジがつぶやく。, シンジは血のついたミサトのペンダントを眺める。  アスカは呆れた表情でシンジを見下ろす。 太陽が山のふもとへと帰る頃。ブランコが揺れる風景。懐かしい歌が聞こえる。  マコトがモニターを見つめながら報告する。  マコトの前に姿を現したのは、制服姿のレイだった。レイは、その現象に震え上がるマコトの方へと腕を伸ばして行く。 「そんなに嫌だったら、もう逃げ出してもいいのよ」とレイが言う。 「それは、現実のつづき」とレイが言う。 「俺が傍にいるとシンジを傷つけるだけだ。だから、何もしない方がいい」 「始まりと終わりは同じところにある。よい。全てはこれでよい」 「それは夢じゃない。ただの現実の埋め合わせよ」とレイが言う。, 「じゃあ、僕の夢はどこ?」とシンジは言う。  リツコは、マヤの顔を優しく撫でて抱きしめる。 「あ、ママだ!」 「だからこれは現実じゃない。誰もいない世界だ」とシンジは言う。  送電線 「そうだ……。チェロを始めたときと同じだ。ここに来たら、何かあると思ってた」 「哀れね」 「判ってないわよ……バカ!」  突然、シンジは逆上すると、アスカの首に手を掛ける。そして、力を込めて絞め上げる。, レイの首を絞める赤木ナオコ。幼いころのシンジが描いた絵。様々な映像が、走馬灯のように駆け巡る。, 「誰も判ってくれないんだ……」とシンジが言う。 「意気地なし!」 「いけないのか?」とシンジは言う。 「えい!えい!えぃ!」 "」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 第13話「使徒、侵入 / LILLIPUTIAN HITCHER」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 第14話「ゼーレ、魂の座 / WEAVING A STORY」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 第15話「嘘と沈黙 / Those women longed for the touch of others' lips, and thus invited their kisses.」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 第16話「死に至る病、そして / Splitting of the Breast」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 第17話「四人目の適格者 / FOURTH CHILDREN」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 第18話「命の選択を / AMBIVALENCE」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 第19話「男の戰い / INTROJECTION」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 第20話「心のかたち 人のかたち / WEAVING A STORY 2:oral stage」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 第21話「ネルフ、誕生 / He was aware that he was still a child.」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 第22話「せめて、人間らしく / Don't Be.」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 第24話「最後のシ者 / The Beginning and the End, or "Knockin' on Heaven's Door"」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 第25話「終わる世界 / Do you love me?」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン 最終回「世界の中心でアイを叫んだけもの / Take care of yourself.」あらすじ, 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に / THE END OF EVANGELION の全セリフとストーリーまとめ.  幼いアスカが泣きじゃくる。  アスカの気迫に負けて、シンジは後ずさりする。  アスカがぶっきらぼうに言ってみせる。 「その報いがこのあり様か……。すまなかったな……シンジ」  シンジの元から去っていく人形たち。舞台の切れ目を見に行ったシンジの足元には、高く組まれたパイプの土台が見える。もう一度砂場に戻って城を固めるシンジ。泣き出しそうになるのを必死でこらえる。  街の風景 「ウソだ!!笑った顔でごまかしてるだけだ。曖昧なままにしておきたいだけなんだ!」  シンジはリリスの中で無数のレイが泳ぎ回るうねりを目撃する。  ユイに抱かれた幼いシンジが、ユイの顔に両手を当ててじゃれる。 「情けないわね……。大っキライ」  レイが尋ねる。  リリスの巨大な腕が地上に落下する。  塞ぎこむシンジの後ろに、アスカ、レイ、ミサトが立っている。シンジは、自分が言い放った後の無言の空気に気づいて、とっさに振り返る。, ミサトの家のキッチンで、アスカがテーブルの上に突っ伏して落ち込んでいる。  シンジの心境の変化と共に、景色が次々と変化していく。 「シンジが怖かったのね」とユイは言う。  甘い声で加持を誘うミサト。 「そう……夢」とレイが言う。, 「判らない。現実がよく判らないんだ」とシンジは言う。  MAGIシステムの音声が鳴り響く。 「曖昧なものは……僕を追いつめるだけなのに」 「判ってるよ……」 「っっん」 「このままじゃ怖いんだ。いつまた僕がいらなくなるのかも知れないんだ。ザワザワするんだ……落ち着かないんだ……声を聞かせてよ!僕の相手をしてよ!僕にかまってよ!!」  レイの両手で顔を触れられたマコトは、そこにミサトの姿を見る。ミサトの姿をしたそれは、恐怖と不安と嬉しさの狭間で戸惑うマコトに抱きついてキスをする。次の瞬間、マコトの体は水風船のように弾けて、L.C.L.へと変化する。  アスカの声が聞こえる。 「ちょっと、つきまとわないで……。勘違いしないで」 「ですから、もう電話してこないで下さい」  シンジは内面で反論する。  シンジはテーブルに手を掛けるとひっくり返して暴れ始める。家じゅうに大きな音が響いてペンペンが驚く。 「私の人生に何の関係もないわ」 「いいんだ……ありがとう」  量産機が地上に降りていくと、それとは逆行するようにして、光の十字架が次々と上昇していく。光の羽根を折り畳んでいく初号機。そして光の羽は消失し、初号機の機体が化石のように黒く変化する。両腕を左右に広げた初号機は、地球より上昇してきた光の十字架に包まれながら、宇宙空間をゆっくりと進んで行く。 「それとも怖い?」 「幸せが何処にあるのか、判らないんだ」とシンジは言う。 「他人も自分と同じだと、一人で思い込んでいたのね」とレイは言う。  リツコの声が聞こえる。 「助けてよ……。助けてよ……。僕を、助けてよォ!」」  マコトが報告を続ける。 「たすけてよ……。ねぇ……。誰か僕を……お願いだから僕を助けて」  児童がそう言うと、舞台の向こうにパイプ椅子に座っている女性が現れる。  アスカは、大声を上げてシンジの胸を突き飛ばす。その反動で、シンジはコーヒーメーカーを巻き込んで倒れる。コーヒーが床に飛び散り湯気が吹き上がる。ペンペンは物陰からその様子を見守っている。  死んだ人々の前に現れるレイ。そして、遺体をL.C.L.へと還元していく。 「だったら僕にやさしくしてよ!」 「他人の現実と自分の真実との溝が、正確に把握できないのね」とレイが言う。  レイが感情の入っていない口調で答える。  そう言ってシンジはアスカに言い寄る。  ゲンドウは初号機に捕まれ、今まさに食われようとしていた。初号機は、大きな口を開けてゲンドウの頭に食らいつく。ゲンドウは下半身だけの姿になってターミナルドグマに立つ。, 包帯を巻いた制服姿のレイが、そこに残された眼鏡を大事そうに拾う。その横には裸のレイが立っている。そして、二人の間に幼いレイが立っている。, 宇宙空間で量産型のエヴァが自らのコアに槍を突き刺して悶えている。量産型は、その行為にまるで救われたかのような表情を見せる。, そして、地球全体が無数の光の十字架で包まれていく。美しく輝く緑色の十字架が、数え切れないほどの数で地球を埋め尽くして行く。そこに溢れ出した赤い光を黒き月の自転が巻き上げる。その光の流れをリリスが手の平で吸収していく。目を見開いて浮遊するリリス。その額に亀裂が入ると、そこへ生命の樹となった初号機が吸い込まれていく。そして、初号機はリリスの体の中へ完全に取り込まれてしまう。, 「はっ……綾波……?……レイ」  シンジは椅子を投げ飛ばして叫ぶ。 「楽になりたいんでしょ。安らぎを得たいんでしょ。私と一つになりたいんでしょ……心も身体も一つに重ねたいんでしょ」とミサトが言う。 「構わない。でも、僕の心の中にいる君達は何?」 「多分ねぇー。自分がここにいることを確認するために……こういうことするの」, そこには、二人の行為を傍らで傍観するシンジの姿があった。  裸で仰向けになっているシンジがつぶやく。, 「ママーッ!」 「夢って、何かな?」とシンジは言う。 「ウソね」  湖畔の見える丘の大きな木の下で、冬月とユイは木陰で話をしていた。 「もう、あっち行ってて」 「嫌い……。誰が、あんたなんかと……。勘違いしないで」  首が溶けてもげ落ちたリリスの首が地表に落下する。 「ただ、逃げてるだけなんだ。自分が傷つく前に、世界を拒絶している」 「夢の中にしか、幸せを見いだせないのね」とレイが言う。 「身体だけでも、必要とされてるものね」  ミサト、アスカ、レイ、三人の姿が重なる。 「僕を見捨てないで!僕を殺さないで!」 「判ろうとした」とシンジは言う。  アスカの声が聞こえる。 「……はぁ……はぁ」  シンジは後ろから回り込んでアスカに近づく。 THE END OF EVANGELION 「僕は死んだの?」 「A.T.フィールドが……みんなのA.T.フィールドが消えていく……。これが答えなの?……私の求めていた」 「くぅ……うぅぅっ……」  車窓から見た都会の景色  児童の声が聞こえる。  アスカは冷たい目でシンジを見下ろす。  両手で椅子持ち上げて床に叩き付ける。 「そして、真実は心の中にある」とレイが言う。  制服姿のカヲルが言う。  シゲルが現状を伝える。  服を着替えながら「子供のするもんじゃないわ」とミサトが言う。  シンジが自分の考えに篭ろうとする。 「その場しのぎね」 「ママ……」 「エヴァ全機、健在!」 「ママー!」 「ただヒトは、自分自身の意志で動かなければ、何も変わらない」とカヲルが言う。 「リリスよりのアンチA.T.フィールド、さらに拡大!物質化されます」 「あんた私のこと分かってるつもりなの?救ってやれると思ってるの?それこそ傲慢な思い上がりよ!判るはずないわ!」 ※ 本記事は新世紀エヴァンゲリオン TV版~劇場版『Air/まごころを、君に』ネタバレを含みます。, エヴァンゲリオン、TV放映26話、そしてその完結編である劇場版『Air/まごころを、君に』を視聴しました。TV放映から約25年、今更ながら初視聴です。, エヴァンゲリオンはマンガ版だけ読んでいたのですが、もう記憶も薄れていました。そろそろ劇場版『シン・エヴァンゲリオン』も上映される(ほんとか?)とのことでこの度アニメ版を履修してみたのですが、いやあ、描かれていることの質量が単純に大きすぎる。ハンマーで頭をぶっ叩かれるような感覚を覚えました。, 頭をぶっ叩かれてしまった以上、頭の中がぐちゃぐちゃです。感想として言いたいことはたくさんあるのですが、せめてこの記事で吐き出したいのは、特に劇場版『Air/まごころを、君に』で描かれる、シンジ君の自我についてです。, 本作は世界の改変というマクロな事象と同時に、シンジの自我という非常にミクロなものの動きを、メインテーマとして描きます。サードインパクトが起ころうとしたとき、シンジは何を決断したのか? そもそもシンジにとって、エヴァに乗ることは何を意味していたのか? なぜ、アスカの「気持ち悪い」でこの物語は幕を閉じるのか?, そんなことについて、つらつらと書かせてください。本作の考察には既に偉大な先人が山程いるわけですが、それでも自分で語りたくなるのがオタクなのです。, シンジはなぜエヴァに乗るのか。シンジは序盤からこの問いに直面したまま、半ば強制的に戦いに身を投じることになります。, 大局的に見ればその問いに対する答えは明らかで、シンジがエヴァに乗るのは、人類を使徒から守るためです。しかし、シンジからするとこの答えには納得できません。これは当たり前の話であって、普通の中学生として過ごしていた少年が、突然謎の機関に呼びつけられて、訳も分からない化物と命を賭して戦わされる。こんな理不尽はないわけです。だからシンジが戦うには、この理不尽を緩和するような、彼にとって「納得感」のある答えが必要になるのです。, そして、やがてシンジはその「納得感」のある答えを見つけます。それは、「エヴァに乗ると父が、他人が自分を認めてくれるから」というものでした。第拾弐話で「よくやったな」という言葉を父からかけられて以来、彼は父が、ミサトが、ネルフのみんなが認めてくれるから、エヴァンゲリオンに乗るようになるのです。, しかし、それは自らの存在意義を他人に依存しているだけなのではないか? そのような問いが、すぐさまシンジに対して投げかけられます。これは第拾六話、シンジが影の形をした使徒に取り込まれるエピソードでの描写が詳しいです。他人が愛してくれるから、生きる。他人が愛を与えてくれないのなら自分の殻に引きこもり、そのことを他人のせいにする。それは易きに流れているだけでは? 甘えているだけなのでは? そう、もう一人のシンジがシンジに対して問いかけるのです。, 同じ問題はアスカも持っています。シンジ同様複雑な生い立ちのアスカもまた、「エヴァンゲリオンに乗って活躍する」ことに自分の存在意義の全てを依拠させるのです。だから、使徒に敗北し、レイに助けられ、シンジに助けられたアスカは自分の価値の全てを見失い、やがて廃人と化します。, このシンジとアスカの問題は、自我が確立していないことです。もう少しわかりやすく言うなら、自分と他人の間の境界線がぼやけているということです。自分と他人の区別がはっきりとしていたら、自分を自分で立たせられることができます。自分に対して、自分で価値を付与することができます。しかし、自分と他人の境界線がぼやけている、すなわち自分と他人が一体化している場合、それはすなわち、自分と他人がくっついてようやく一つの実体として生きることができている、ということである。つまり、他人が「愛」や「評価」、「承認」を通して支えてくれるから、ようやく立っていられている。だからそこから他人を奪うと、一気にその実体にガタが来るわけです。, 自分と他人が一体化しているといえば、生後の自我発達のメカニズムを説明した、フロイトの「エディプス・コンプレックス」が有名です。これは男児の説明ですが、男児は生後間もないころは自我がなく、情欲の対象たる母親との一体化を志向する。しかし、母親と愛しあう関係にあるのは赤子ではなく「父」であり、ゆえに父たる存在が、その一体化を阻害する。フロイトの言葉を借りるならば、男児は「母と同一化しようとすると、父に去勢される」という去勢不安を覚えるようになる。だから、男児は母との決別を決意し、かくして自他の境界、すなわち「自我」が発生するというのです。, この説によるならば、シンジとアスカは未だ「母」との同一化から決別できていないわけです。実際、アスカもシンジも、母からの愛を喪失しているからこそ、その苦悩に至っている。2人はまだ、母の幻影を追っているのです。, ここまで話すと、エヴァンゲリオンのエントリープラグが胎内、その内部を満たす液体LCLが羊水、電源ケーブルであるアンビリカルケーブルが文字通りへその緒のメタファーであることが、非常に効果的な皮肉として効いてきます。シンジとアスカがエヴァに乗るということは、母との同一化から抜け出せていないこと=「自我の未確立」の反復行為であるわけです。, 人類補完計画とは、人類全てを一体化させ、単一かつ完全な生命として生まれ変わらせる計画です。作中でこの計画を目指すゲンドウ、そしてゼーレはそれぞれの哲学があってこの計画の実現に走るわけですが、上記の「自我」という文脈で言うならば、この計画は「自分と他人の境界(=心の壁=ATフィールド)を取り払い、自分と他人を一体化させる」ということです。, この計画は作中では、「愛してほしい人が自分を受け入れてくれる」という幻覚として可視化されます。日向はミサトが、マヤはリツコが自分を受け入れてくれる幻覚を見るのです。そして首謀者であるゲンドウは、ユイとの邂逅を果たす。自分は特定の他人からの愛を受けることでようやく完成するのに、その愛が欠如しているから完全体になれない。そこで、自分と他人が全て一体化すれば、それにより他人の愛は自分のものにもなり、自分は完成する。欠如していた要素が「補完」されるのです。平たくいうなら、ジャイ○ンの「オレのものはオレのもの、お前のものもオレのもの」が、「オレ」と「お前」の同一化により果されるということですね。   自分と他人の境界線があいまいで、自分と他人が一体化して初めて成り立つ実体になってしまっているから、他人の愛や承認が抜けると、自分を成立させることができない。そんな自我の問題を、シンジやアスカほどでないにしろ、日向も、マヤも、ゲンドウも、いや誰もが抱えていた。だからその問題を、全人類を単一生命化して「自分」や「他人」という概念をそもそも消滅させることで、解決する。それが、人類補完計画なのです。, そんな人類補完計画ですが、その成否は、『まごころを、君に』にて同計画の依り代がシンジになったことで、最終的にシンジの選択に委ねられることになります。「自分」と「他人」の間で苦悩し続けたシンジは、「自分」と「他人」という概念を消滅させる人類補完計画を支持するのか。それとも、それでも「他人」という存在を求め続けるのか。シンジは内省を重ねに重ねた結果後者を選択し、かくして人類補完計画は中断、失敗に終わるわけです。, この構造は、エヴァンゲリオンが「セカイ系」の始祖とされるがゆえんを物語っています。「セカイ系」は「『きみ』と『ぼく』の個人的関係性がそのままセカイの行く末につながってしまう物語」と定義されますが、人類補完計画は、自分の心に空いた「他人の愛」という穴の補完を、セカイの改変によって実現しようとしている。さらには、そのセカイの改変の成否は、シンジがこれから「他人」とどう向き合っていくつもりなのか、そんな至極個人的な姿勢によって左右されてしまう。セカイの在り方が、「きみ」と「ぼく」という第二人称との関係どころか、「ぼく」の心の在り方という、第一人称の核と直結しているわけです。   この点で、エヴァンゲリオンは単にセカイ系であるどころか、セカイ系の始祖にして、セカイ系を最も極端な形を体現してしまった作品であると言えるのでしょう。, 人類補完計画の成否を委ねられたシンジは、その中断を選択します。確かにシンジは「自分」と「他人」の間で苦悩し続けてきた。他人に愛されないから、自分に価値を見出すことができない。他人をすぐに傷つけてしまう自分には、他人とつながる資格なんてない。そう悩んできた。でも、他人という存在が全くいなくなってしまうのは少し違う気がする。やはり他人とのふれあいにこそ、本当の幸せの可能性が隠れている気がする。だから、まずは自分を確立する。そうシンジは考え、人類補完計画を頓挫させます。, にもかかわらず、シンジは再び世界に戻ったとき、隣にいたアスカの首を絞めます。「アスカの首を絞める」という行為は、作中のシンジの心象風景の中で既に描かれているところでした。シンジはその心象風景の中で、アスカに愛を、承認を求め、それを一切与えてくれないアスカを憎しみに任せて殺すのです。この行為はまさに、他人の愛がないと自分を成り立たせることができない、すなわち自我が確立していないことの証であるわけですが、そんな行為を、ここにきてシンジはアスカに対して繰り返すのです。, もっというと、シンジは首を絞めようとしたアスカに頬を撫でられ、その手を緩めます。愛を与えてくれないアスカに対する強い憎しみは、アスカからの優しさですぐに霧消していくのです。, そう、シンジは何も変わってないんです。「他人」という存在を奪われる可能性を前にしたことで、一度は自我の確立を決意したシンジは、再び「他人」を与えられるやいなや、「他人」が愛を与えてくれない憎しみを、「他人」の愛への依存を、取り戻す。, これは「彼女欲しい欲しい」と言っている男が、彼女ができた途端「やっぱり彼女いるの面倒くせえな…」とか言い出すようなもので、シンジの人類補完計画を頓挫緒させる決意は、他でもない、ただの「他人」に対する無いものねだりだったわけです。, シンジは自我が確立していないがゆえに、他人の愛や承認を求める。これは言い換えると、他人を「自分の成立」の手段として利用しているということです。自分にとって他人は、自分に愛や承認を与えることで自分を確立させてくれる、いわば便利な道具なんです。だから、自分に愛を与えてくれない他人は自分にとって利用価値のない、廃棄するだけのモノでしかないし、逆に言えば、自分を満足させさえしてくれるのなら、他人の働きとしてはそれで充分なんです。自分を充足させてくれるならば、誰でもいいわけです。(上記の心象風景でアスカが「誰でもいいんでしょ?」とシンジを糾弾するのは、まさにこのポイントです。), その際たる例が、『Air』冒頭の、シンジの自慰のシーンです。廃人状態になり意識のないアスカの裸体を不意に見てしまったシンジは、その病室で、アスカの横にいるまま自慰します。これはアスカのことを思いやるならばあり得ない行為です。でもシンジにとっては、他人がどうなっていようと、その他人が自分を満足させてくれるのであれば、もうそれだけで十分なんです。だから、アスカの状況にかかわらず、アスカの裸体を見た時点で、シンジの頭の中でアスカは「一人の人間」から、「自分の性的満足を満たしてくれる、有用な道具」に変換される。そして、シンジは行為に及ぶことができるのです。    すなわち、映画冒頭の自慰シーンと、映画末尾の首絞めは、本質的に同じ行為であるわけです。自我が確立していないから、他人を道具としてしか見ることができない。まさにこの点でシンジは、この劇場版『Air/まごころを、君に』の冒頭と末尾で、何も変わっていないんです。, ここまで来ると、最後のアスカの「気持ち悪い」の解釈が可能になってきます。これは後日のインタビュー(「BSアニメ夜話 2005年3月28日放送」より)で明らかになったお話ですが、最後のアスカのセリフは当初、「あんたなんかに殺されるのはまっぴらよ!」だったそうです。しかしその台本に納得のいっていなかった庵野監督が、アスカ声優の宮村さんに、「自分が寝ている間に男が横にいてオナニーしてたらどう思う?」という旨の質問をしたら、その答えが「気持ち悪い」だった。だから、最後のセリフが「気持ち悪い」に変更された、そんな経緯があったようです。  そう、横で自慰行為をされることは、当然ながら気持ち悪い。そして、アスカの首を絞め、アスカの優しさにその手を緩める行為は、その自慰行為と本質的に何ら変わらない。だから、アスカの首を絞め、その手を緩める行為も、同様に気持ち悪いんです。ゆえに、アスカの最後の言葉は、本当に軽蔑を込めた「気持ち悪い」だった、私はそう思います。, 結局シンジは、この『新世紀エヴァンゲリオン』という作品の最初から最後まで、どうしようもなく気持ち悪いんです。人類を救う英雄であり、物語の主人公もあるこの碇シンジという少年を、なんのカタルシスも、精神的成長もなく、ただただ最初から最後まで他人を道具としてしか見ることのできない、どうしようもない人間として描き切った。それが、『Air/まごころを、君に』という映画の凄みなのだと思います。, 私たちは常に愛を、他人とのつながりを、承認を求めています。本作放映・上映当時には存在しなかったSNSが生まれ、「承認欲求」という言葉も人口に膾炙しました。, この『新世紀エヴァンゲリオン』は、「自分」の殻に閉じこもり、他者を直視しないアニメオタクに投げかけられた強烈な批判である、と評価されることもあります。その発表から既に20年以上が経ち、私たちはインターネットによって自分の殻を破り、他者とつながることができるようになりました。, では『エヴァンゲリオン』の批判を私たちは既に克服したか、というと、実は真逆の事態が進行している。今や私たちは、ますます他人からの「いいね!」に依存するようになっている。他人に褒めてもらうために、タイムラインに自分のいいところを流すことに腐心する毎日を送っている。私たちはせっかく得た他人とのつながりを、自分の価値を示すためのステータスとして利用していないでしょうか? あるいは他人を、自分の社会的な、精神的な、あるいは性的な満足を満たすための手段にしていないでしょうか?, そんな他者への依存、他者の道具性が私たちを掴んで離さない限り、この『新世紀エヴァンゲリオン』という作品は、『Air/まごころを、君に』という映画は、たとえ何十年経とうと、それを見た者の心に深い爪痕を残し続けることになるのでしょう。, P.S.

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