まごころを君に シンジ

「シンジ君は神を信じているのかな?」 「さあ。無宗教ですから。神頼みはしますけど、これといって神さまを信仰してはいませんね。あ、でもお稲荷さまとかは信じてます。八百万の神さまとか」 「ほう。シンジ君はそっちの方に興味があるのかな?」 シンジはそこで満足して思わず嗚咽を漏らしてしまう。 置いてけぼりをくらったアスカは興ざめし、 「気持ち悪い」と自己完結するシンジを軽蔑した・・・。 まとめると、 「まごころを、君に」のラストシーンについていろいろ考えた感想は 3.1 碇シンジとは 1 『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』ってどんな映画? あらすじは? 2 『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』は、TVシリーズ版をわかりやすくしてくれた作品だった; 3 人類補完計画とはなんだったのか?. シンジが他人の恐怖に怯えながら生きていくのを決意したのがまごころを君に シンジとアスカしかいなかったのがone more final 45: 風吹けば名無し :2020/09/17(木) 15:27:09.84 ID:G98/5ohU0.net アニメ版の結末はシンジの精神世界が描かれたのですが、シンジが「おめでとう」と祝福されているシーンで終わってしまい、社会的に物議を醸しました。 そこで、アニメ版の結末を補完する位置づけで、この「Air/まごころを、君に」が制作されました。 そして母さんは、帰らぬ人となった。そんな実感が湧く暇もなく、僕は父さんにも会えなくなった。, 大好きだった母さんが死んで、父さんだって辛かったんだろう。だから僕は父さんを待つ事にした。, それでも父さんは僕に何も言葉を掛けてくれない。僕を見てもくれない。ずっとお墓を見ていて、そんな父さんの背中は泣いている様に見えた。, それでも良い子ではいようと努力してみた。母さんの事を知りたくて、叔父さんに色々と聞いてみたけれど、叔父さんもあまり母さんの事を話してくれなかった。だから色々と調べてみて、母さんはとても有名人だとわかった。かといって芸能人みたいな有名人じゃなくて、とても頭の良い学者さんだったという意味だった。, 母さんみたいに頑張れば父さんは僕を見てくれるのかなと、必死で勉強を頑張り始めた。勉強なら叔父さんも叔母さんも嫌な顔をしないで教えてくれたから。, 小学生の頭で頑張っても解けないことは多かった。だから図書館で調べたりして頑張った。この頃から叔父さんと叔母さんもあまり勉強を教えてくれなくなった。, 同級生に教わろうにも、僕がこの頃勉強していたのは中学3年か高校1年程度の事だった。小学生でそんな勉強をしていたら変な目で見られる事もあった。, 何をしたら父さんは僕を見てくれるのだろうかと必死に考えて、もっと母さんみたいになれるように髪を伸ばし始めてみた。色は変えられないけれど、せめて母さんみたいに髪が長くなって、母さんの面影があれば父さんも僕を見てくれるんじゃないかと思い始めた僕は正直少しバカだったかもしれない。, 中学校に上がって、でも授業自体は既に自分で勉強をしてしまった所だったから苦もなく復習感覚で授業を受けていた。, テストも全教科9割り正解は普通。でもやっぱり忘れてたりする所もあって、これじゃあ父さんだって僕を見てくれないと少し落ち込みながら、学年末はオール満点を叩き出した。やっぱり東方の三賢人と呼ばれてすごい人だった母さんの子だから、そんな母さんに恥ずかしくない様になりたかった。, 自分の人生を振り返ってみたらそんな言葉で締め括られてしまう。そしてこれから先の事すらなにも考えていなくて。父さんに見てもらえたその先の事をなにも考えていなかった。母さんみたいになって、じゃあ自分は何をしたいのか考えて、やっぱり答えは出なかった。, それでも宿題をすっぽかすわけにも行かないから、誰にも言わないことを念を押して担任の先生に頼んで、ありのままに作文を書いた。, 中学2年になって暫く。とはいっても学校生活が1年生の頃と何が変わるのかと言われても、後輩が出来ること以外には特になにもなく過ぎていく。, 学校の校門の前。黒い車が止まっていて、黒いスーツの男の人が周囲を見渡していて、その中心に居る初老の男の人が僕に声を掛けてきた。, 言葉から目の前の人と自分は会ったことがあるらしい。久しぶりという言葉で、暫くは会っていないということはわかる。覚えていないという言葉はそれほど記憶できるかどうか曖昧な時期かもしれない。, 実験室の様な場所で紹介された人の中に居た。あの時から白髪になっていても全体的な雰囲気が変わっていない。10年も前の事なのに思い出せたのは――。, 母さんがいなくなった日だったからだとは、少し嬉しそうに微笑んだこの人の前では言えなかった。, そうは言われるが、断れる雰囲気でもなかった。黒いスーツのボディガードみたいな人たちを連れていて、黒塗りの車に乗っていて。もしかしなくても偉い人なのかもしれない。, 黒いスーツの男の人に手荷物を預けて、僕は車に乗った。後ろからじゃわからなかったものの、リムジンの様に少し縦長の車だった。, 勧められたものを断るのは相手に謙虚さというものを見せられるけれど、気遣いを不意にしてしまう事もある為に受ける厚意は受けた方が良いらしいというのを本で読んだ事がある。, 父さんには一言も言って貰えなかった言葉。叔父さんも叔母さんも、僕のこの事にはあまり触れなくなった。, 「ふむ。君のお母さん。ユイ君とは大学の教え子なのだが。一目見たときは正直ユイ君が其処に居るのではないかと思ったよ。見た目は似ているがユイ君よりも君は子供だ。だが雰囲気が似ていたのだよ」, 母さんみたいになろうと頑張って、そう言われたのは初めてだった。叔父さんも叔母さんも、母さんの事については腫れ物を扱うような感じだったし。父さんはなにも話してくれないから母さんの見た目は知っていても、どんな人だったかまではわからない。そういう記憶を積み上げる前に、母さんは死んでしまったから。, 「成績表を見せてもらったが、君は優秀だ。きっと将来、ユイ君にも負けないくらいの逸材になるだろう」, それを最後まで口に出来なかった。でも、母さんみたいになれると言われて。お世辞かもしれないけれど、嬉しかった。, 計画の為、サードチルドレンとして招集予定だった彼の事は報告書で知っていたが。少し変わった子だと昔から思っていたが、このところ少しユイ君に似てきた気がする。というよりも中学生になってから髪を伸ばし始めたらしく、今ではユイ君よりも少し長いだろうか。, 遺伝子的にはユイ君の遺伝子が多大に仕事をしていてやつの面影は髪の色という位だが、やはり親が居ないと子は親を求めるものなのだろう。, 「将来の夢」と題された作文課題。セカンドインパクトによって一度地獄を見た人類だが、しかし今も変わらずこのように子供たちは平和に学んでいる。いや、そうなるように人々が努力したからだ。15年という月日を掛けて。セカンドインパクトが起こった直後の数年は、沿岸部の都市はひどい被害を受けた。それによって日本でさえ一時期は治安が乱れ、正しく地獄のような光景もあった。だが今はそれを語るべき時ではない。, だが報告書で見る度に、彼は母親に似て優秀な面があるというのがわかってくる。近頃はよりユイ君に似てきた。その理由はなんとも子供らしい所と、意外と頑固そうな所にふと彼女の気配を感じてしまったのだ。, 実際に話してみて、その物腰の軟らかさはユイ君と似ていた。そして、他人と1歩距離を置くところは父親に似ている。そう改めて見ると、やはりあのふたりの子なのだ。, 自分の事に関する事で口下手なのはやつに似ているが、それでもちゃんと話そうとする所は彼女の血が後押ししているのだろう。, 「国連直属って。国家公務員って事ですよね。もしかして冬月先生って、そこの偉い人。だったりします?」, 一を聞いて、見て。そこから10や100を考える。まだ人生経験が足りないものの、その発想と思考展開にはやはり彼女の影を感じせずには要られなかった。, そして此方の事を案じて気にする所は彼自身の良さか。他人に対して臆病な部分がシンジ君には良い方向に働きながら、その実内向的な人柄を作っているのだろう。人付き合いが不器用なのは親子揃って同じ様だ。, 「埋まっている? …じゃあ、見えている様なドーム型じゃなくて完全な円形をしているんですか?」, その優秀さが少し見たくなって余計なことも言ってしまっている気もするが、思案する顔も彼女とそっくりだ。, 「もしかしたら地球の外からやって来た誰かが遺した物かもしれないって考えると、ロマンとかありませんか?」, 「月も元々は地球に隕石がぶつかって出来たって言いますし。完全な円形って自然に出来るのは難しいですし。そんな突拍子もない発想だから何故と訊かれても上手く説明出来ないんですけど」, 「いや。人は時としてひらめきをもって答えを出す事もある。突拍子もない発想であってもそれが答えだったと言うことも時としてあることだ」, 「わかるような気がします。ひらめきって、どうしてその答えが出てきたのかわからなくて。でもそれはきっと必要なことだから出てきた答えで。神さまが教えてくれる答えなんかじゃないかって」, 「さあ。無宗教ですから。神頼みはしますけど、これといって神さまを信仰してはいませんね。あ、でもお稲荷さまとかは信じてます。八百万の神さまとか」, 「ええ。日本ってこんなに狭いのにたくさん神さまとかが居て面白いなぁって思ってたらつい夢中になっちゃって」, 生物学を専攻していたユイ君とはまた違うものの。14歳と考えたら物識りではあるだろう。小学生が独学で高校生レベルの勉強をしていると知ったときは血は争えないと思いもした。ユイ君もやつも学歴は優秀な人間だ。そのサラブレッドなのだから何れはこうなっていたのだろう。, やはり得意分野の話ともなると明るく得意気に話す部分はまだまだ子供であると感じさせられる。, シンジ君をネルフまで連れてくるという予定外の事をしているが、修正は容易だろう。遅かれ早かれ彼は此処に招かれるのだから。, 始まれば駒を指す音だけが響く。指しなれて居ない為に彼の方は一手一手ぎこちないものの、何をしたいのかは見えてくる。, 赤木君の言うことも最もだが、これも遅かれ早かれだ。いや、きっと似合わない情が湧いているのだろう。やつは雑務はすべて此方に投げてくる。シンジ君の管理すらもである。父親の自覚がないというか、ユイ君しか見えていないというか。, 人のことは言えないが、せめて少しでも報いる事があるのならばそれは彼に出来ることをしてやる事くらいだろう。, 話が一段落したところで彼が入ってくる。少し不安そうなのは態々人を呼んでまで案内させる意味を理解しての事だろう。, 「それは見てのお楽しみというものだ。案内は赤木君に任せるから、彼女に着いていきなさい」, そう言って赤木君に着いていく形でシンジ君は出ていった。部屋を出る時にも一度振り返って頭を下げる身の入りようだ。, 10年も。一方的にだが見守ってきた子をこれから自分達の都合で戦場に叩き込み、そして文字通り地獄に落とさなければならないのだ。, そういう聞こえの良い言葉で騙し、あの子を戦わせるのだから、せめて戦うための覚悟くらいは持たせてやりたいと思ってしまった。, 将棋盤の上を見る。あのまま指していたら12手先で負けていた。趣味の範疇だったが、それでも頭の回転と発想力では既に追い越されているかもしれない。その優秀さがどの様に成長するのか。, 予定では招集するのはまだ先だったはず。そして初号機を見せるのも。計画の前倒しなんて聞いていない。いったい副司令が何を考えているのかは汲み取る事は出来なかった。, 「何かしら。あと先に忠告しておくけれど、くれぐれも離れちゃダメよ? 探せるけど、この広大で迷路みたいな施設で迷ったら餓死寸前で見つかった。なんてこともあるのよ」, 白衣を摘ままれた位でどうとは思わない物の、あの人の息子だと言うだけあって同じ様に不器用で、少し可愛いげがあった。, それでも見た目は完全に母親に似ている。着ている制服が男子用でもなければ女の子に間違われても不思議じゃない。実際副司令の部屋に入った時に見た後ろ姿は女の子に見えたもの。, 初号機を見せるのだからある程度は話す必要があるとしても今から何処までを話して良いのかというものに悩む。, 少し穿った答えを出す。その言葉の意味を考えて、彼はそれ以上の事を聞き出そうとはしなかった。今は訊くときではないと判断したようね。何れにしろ見せる時に説明するし、見る時に説明されると考えた。, 「自己紹介がまだだったわね。技術一課E計画担当の赤木リツコ。よろしく、碇 シンジ君」, 自己紹介を終えたあとはほぼ無言のまま歩き続け、そうして第7ケージにまで彼を連れていく。, 途中ボートに乗って直接アンビリカルブリッジに乗り付ける。そして彼の手を引いてボートから降りたあと、ブリッジの真ん中まで案内して、照明を点ける。, 少し赤面しながらも立ち上がる彼は真っ直ぐ初号機と向き直った。その目に映るのは――懐かしさとも、悲しさとも読み取れる複雑な顔。, 初号機に向けて母さんと、はっきり口にしたシンジ君に溜まらず声が漏れてしまった。この子は知っているというの? いえまさか、そんなことはないはず。, 「…実は10年くらい前にも僕はこういう所に来たことがあるんです。人類の明るい未来を見せてあげたい。母さんの最後の言葉です」, 3、4歳の頃の記憶があるというシンジ君。大人の10年ならばまだわかる話でも、そんな子供が10年前の記憶を覚えているものかどうか。, それでも強烈な記憶であれば残っていても不思議ではない。そういう事であって、そして、この子は思った以上に聡い子なのかもしれない。, 「厳密に言うと、ロボットじゃないわ。人の作りだした究極の汎用人型決戦兵器。人造人間エヴァンゲリオン。建造は極秘裏に行われた、我々人類最後の切り札よ」, 「…これが必要になる程の何かがやって来る。10年前から開発しなければならなかった決戦兵器。セカンドインパクトと関係があるんですか?」, 「その返し方が半分答えのような気がしますけど。それに、巨大質量隕石の衝突っていうのも無理があります。南極大陸が蒸発するほどの物なら落ちる前に避難勧告だったり、テレビや雑誌で取り上げられても良いのにそんな記録は何処にもない。その事実が10年以上も定説として言われていますから今更誰も疑問には思いませんけど。それに決戦兵器ってことは、このエヴァンゲリオンは何かと戦うために生まれた。火のない所に煙は立たない。ならこのロボットが必要なナニカがあって、そして10年前から開発されていた事を考えて、じゃあ何故開発する必要があるのか考えてみて、一番大きな事件って言ったらセカンドインパクトくらいしかありませんから」, 末恐ろしいというか。放っては置けない子になってしまった。或いは多くを教えるわけにもいかなくなってしまったとも言える。少ない情報でそこまで考えてたどり着ける。14歳の子供がと考えたら、天才の血はしっかり受け継がれているという事になる。, 「これを見たからには。見せたからには、僕も何らかの形でこれに関わるんでしょうけど。教えてくれますか? これに関わっていている母さんや父さんが居る僕には知る権利があると思います」, 「わかりません。でも、知りたいんです。母さんが何をしていたのか。父さんが何をしているのか」, 未知への欲求。その顔は何故か母と重なった。両親揃って研究者なら、子もまたカエルという事なのかしらね。, 恐らく自分が話さなくともいずれ知るだろうし。そして彼は自力で真実に辿り着いてしまうのではないかという漠然とした、淡い期待もあった。, 「セカンドインパクトが隕石の衝突というのはウソよ。15年前、人類は大型で人の形をした物体を発見したの。でもその調査中に原因不明の大爆発を起こしたのよ。それがセカンドインパクトの真実」, サードインパクトと聞いて不安になってしまったのだろう。彼は暗い顔になって、それでも真実の一端に辿り着いた。ネルフ職員でならば知ることが出来る情報。しかし、ただの14歳の少年が辿り着くには難しい真実。それを知り得た情報だけで導き出した。, 「これは国家機密レベルの情報よ。それを知ったあなたはもう普通の生活には戻れないわ」, 「まさか。ただあなたの処遇が決まるまでは地下に缶詰かもしれないけれど、悪いようにはされないわ」, もう一度初号機を見上げる彼は何かを思っているのだろうか。辛く、何かに耐える様に顔を歪ませた。, 「こう見えてわたしも偉い方の役職だもの。一緒に居れば監視の名目も立つし、施設内なら行動の自由もあるでしょう。ちなみに逃げるなんて考えたらだめよ? 問答無用で拘束されるわ」, 副指令に連れてこられたのなら保安部の人間も見ているでしょうし。そこから問答無用で拘束されると釘を刺したら顔を真っ青にして頷いて。ちょっとかわいそうだったかしら。でも表情がコロコロ変わるのはあの人にはない魅力ね。それに頭も良い。気勢も大人しいから少し気に入ってしまったわね。, 「他に知りたいことはないかしら。必要以上の機密に触れない事なら教えてあげられるわよ?」, エヴァがどう動くのか。操縦系の話が気になる事というのは、ロボットが好きな男の子らしい質問に思えた。, 「そうね。基本的にはパイロットの脳波で動くのよ。思考制御体感操縦式有人兵器って、意味がわかるかしら?」, 「ごちゃごちゃレバーを動かさないで頭で考えて動かすって事なら。…もしかして機体のダメージがパイロットにフィードバックされちゃったりします?」, 「ふふ。あなたは優秀ね。ええ。機体を思考でコントロールするという事は自分がエヴァでもあると同義なの。普段生活して身体を動かすようにエヴァを動かす都合上、どうしても痛みを感じてしまうわ」, 「仕方ないわ。普通のロボットと違って、エヴァは人造人間。シンジ君の想像している様にレバーとかペダルでは動かしきれない。人の思考で動かすのが最も効率が良いのよ」, 「それについては今のところは何とも言えないけれど、神経接続をカットすればパイロットの安全は保障するわ」, 「それって手足が捥げようが生きていて思考が出来るならパイロットが出来るってことの裏返しですよね?」, 謙遜しているけれど、少しの会話で彼がとても優秀な人間だというのは理解できた。まるでマヤみたいね。少し仕込んでみたくなってしまったけれど。, 「さて。この話題はお終いにしましょう。あなたを相手にしていたら終わらなくなってしまいそうだわ」, 「怒っているわけじゃないから謝らなくてもいいのよ。あなたの年齢でこういう話題に着いて来れる子なんて早々居ないからつい楽しくなってしまうのよ。だから少しは自分に自信を持っていいのよ?」, そして基本的に褒められたことがないのもあって、そうして褒めると静かに嬉しそうに破顔している所も可愛げのある一面ね。本人は気づいていないのでしょうけど。, 背筋に感じたうすら寒い物を感じて慌ててケージを振り返った。でもそこには暗闇が広がり、警告灯の小さな光源によって薄っすらと初号機の顔の輪郭が見えたくらいだった。, 「何でもないわ。それと、リツコで構わないわよ。あなたとはこれから長い付き合いになるだろうから」, 冬月先生に連れられて、僕はとんでもない秘密を知ってしまって。でもよくあるスパイ映画みたいな知り過ぎたんだっていう事にはならなくてホッとした。, そしてリツコさんに連れられて食堂に向かったけれど、食事の味は半分もわからなかった。でもパンケーキは美味しかったのは覚えている。, 宛がわれた個室。昼食の後にやっぱり僕は帰れないことをリツコさんから伝えられた。きっとたぶん叔父さんと叔母さんの所にはもう帰れないのだろうと漠然とだけど確信していた。でも別に悲しいとは思えなかった。それよりも少しだけ父さんの傍に居られることが嬉しくて。不安だった。, 父さんはこのネルフの司令。つまり一番偉い人だとリツコさんから聞いた。でも父さんは僕に会いに来るどころか伝言も何もない。留守なのか尋ねる勇気はなかった。そしそれで近くに居るのに何も言って来ないとわかってしまったら悲しくてどうにかなってしまいそうだったからだ。, ぐっすり熟睡というわけにはいかなかった物の、身体は寝れているから精神的な疲労を少し感じるくらいだった。, 「動けそうなら着いてきて貰えると良いのだけれど。無理そうなら部屋で休んでいても良いわよ?」, 態々リツコさんが来てくれたという事はその必要があるという事で。忙しいリツコさんの時間を煩わせてしまった申し訳なさもあって寝ていても気になってしまうから着いて行くことにした。なによりもしかしたら父さんに会えるかもしれないだなんて淡い期待を持ちながら。, 白衣を着るというとお医者さんをイメージするけれど、リツコさんを見ていると科学者の人も白衣を着てたりするなぁっと思って。そういえば母さんも白衣を着ている写真が幾つか図書館で読んだ本に載っていたのを思い出した。これでまた少しだけ、母さんに近づけたかな。, 「取り敢えず今日は軽く施設の見学になるわ。察しが良いあなたならわかるとは思うけど」, 「詳しい契約書は後で渡すことになるけど。超法規的処置という事になるわね。表向きには善意のボランティアになるのかしら。私物は来週には届くそうよ」, 後戻りできないところに踏み込んでしまっている。でもそれが母さんと父さんの仕事だから。だから僕がどういったところで変わらない。今更引き返そうとも思わない。そうしたらきっと、もう父さんに見て貰えないかもしれないと思うと怖くなったから。, 「おはようマヤ。丁度良いわ。紹介するわシンジ君。わたしの部下のマヤよ。メインオペレーターもしているから何かとあなたと関わることになると思うわ」, 紹介されたのは明るめなお姉さんという感じのマヤさん。僕の名前を聞いたら少し驚いていた。, 僕が父さんの子ということよりも男だった事が更に驚く事だったらしい。自覚しているから今更どうとは思わないけれど、申し訳なさそうにマヤさんは僕に謝って来た。, 「懐が深いわね。さて、次はわたしの部屋に行きましょうか。朝のコーヒーを入れてあげるわ」, リツコさんの部屋。というか仕事部屋。書類の山はあるものの綺麗に整頓されている所を見るとリツコさんは几帳面な人なのだろうか。間違ってもだらしがないという人には見えないものの、まだ知り合って1日であるからどういう人なのかははっきりとはわからない。, 「マヤさんが、リツコさんのコーヒーは美味しいって言ってましたから。美味しさを知るのにはブラックが一番かなって」, そう言いながらリツコさんは豆を加熱するところから始めた。結構凝り性の人なのだろうか。, 国家公務員でとても忙しい人に勉強で分からない事を訊くというのも申し訳ない気持ちになってしまうものの、それ以外に当たり障りのない話題が僕にはなかった。, 「まさか大学生レベルの質問が出てくるとは思わなかったわ。中学生のあなたには早すぎる問題よ」, そう。これくらいで躓いていたらダメだ。母さんはもっとすごい人だ。だから母さんに追いついて、母さんみたいにならないと父さんは僕を見てくれない。. 映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを君に』ネタバレ感想・考察・解説を紹介します!「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを君に」はアスカのラストシーンなど、極めて難解ながら伝説と化した完結編です。 エヴァンエリオンの「Air/まごころを、君に」のラストシーンで、なぜシンジはアスカの首を絞めたのか?そして、アスカはなぜシンジの頬をなでたのか。アスカの「気持ち悪い」という言葉の意味とは?これについて詳しく解説、考察しています! 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